ここではアナトミートレインの1つであるディープバックアームラインの説明をしていく。
個人的にアームライン系は結果が出やすく、比較的使用することが多い。
是非ディープバックアームラインの概要や走行、治療アプローチポイントを確認して日々の現場で活かしてほしい。
ディープバックアームラインとは
ディープバックアームライン(DBAL)とはアナトミートレインの1つで4つあるアームラインの1つになる。
スーパーフィシャルバックアームラインと同様、背部から上肢にむかうラインになるけど、スーパーフィシャルバックアームラインよりも深部にある。
アームライン系は基本的に筋肉と筋膜が交互に配置されている。これらがお互いに機能する事で可動性と少しの安定性が確保される。
ディープバックアームラインの走行
ディープバックアームラインの走行を確認してほしい。
肩甲挙筋・菱形筋~
腱板~
上腕三頭筋~
尺骨~
小指球筋~
肘を後ろに向けて手掌を地面に向けた際にある上肢の後ろのラインになる。つまり解剖学的肢位とからみるということだね。
ディープフロントアームラインは母指側でディープバックアームラインは小指側となる。
ディープバックアームラインの主な機能
ディープフロントアームラインが前面をコントロールするならば、ディープバックアームラインは主に後縁をコントロールし、上肢の外側を安定化させている。
中でも回旋筋腱板(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)は重要で肩の安定化の大きな役割を果たす。
また肩周囲の問題を小指球へアプローチすることで反応が出る事もあるので、機会があれば試してほしい。
ディープバックアームラインのアプローチ
ディープバックアームラインの治療やアプローチポイントの紹介になる。ただし、回旋筋腱板の説明をすると大変なので今回は省略もらう。
アプローチは基本的に浅いラインから行った方がいいとのことだけど、深部のこのラインから行ってもいいね。
肩甲挙筋・菱形筋
肩甲挙筋と菱形筋は小胸筋と一緒に肩甲骨を下方回旋する筋肉になる。これらをリリースする事は肩甲骨の不良肢位の改善につながる。
姿勢不良の人は下方回旋、つまり肩甲挙筋と菱形筋が短縮位となっている(小胸筋は今回のラインでは紹介しない)ので、ゆるめて上げる必要がある。多くの場合、これはいわゆる なで肩 と呼ばれる。
側臥位で上肢挙上位(90°~100°がいいかもしれない)で腕を顔の前に出してもらい、そのまま肩甲挙筋と菱形筋を直圧するだけでいいだろう。
物足らないようなら上肢をより前に出して伸張位として行ってもいいかもしれない。
短縮した筋肉は伸張位として痛みがない範囲で圧迫するとリリースされやすい。場所によっては相反神経支配による抑制も使ってもいいだろうけど、ここでは難しい。また出来るなら収縮後弛緩なども1つの方法だ。これは力の調節が出来ない人には少し難しい。
上腕三頭筋
上腕三頭筋は筋間中隔をアプローチすると効果的だけど、それはスーパーフィシャルフロントアームラインやスーパーフィッシャルバックアームラインで説明済みなので今回は違う面から説明したい。
背臥位で肩甲骨を内転、上方回旋させて固定する。
肩甲骨を上方回旋という事は上肢は自然とある程度挙上位になっているばず。そのまま肘関節を最大まで曲げよう。痛みがない様に気を配る必要がある。
そこで上腕三頭筋の硬結部位を探し直圧しスライドされてリリースする。
もう1つは同じ肢位から肘関節は伸展位で行う。硬結部位を直圧しながら肘関節を伸展していく事でリリースとなる。
後者はASTRに似ている手技だね。
尺骨(内側腱膜)
肘関節伸展位、前腕回外位、手関節背屈位で尺側を伸長させ適度に直圧するといいだろう。
硬結部位を圧迫し手関節の掌屈・背屈運動でもリリースになる。
小指球
小指球はあまりアプローチする機会は多くないかもしれない。
行うとしたら小指を対立運動と反対に伸張し軽く圧迫をする。また屈筋支帯と関連しているため、屈筋支帯を開き軽くリリースするかもしれない。
関連記事・参考文献
書籍は例によってファッシャル・リリース・テクニックを参考にさせてもらった。
非常にわかり易く書かれていて、価格も手ごろなのでおすすめ。
また筋膜リリーステクニックも個人的にオススメする。今はボリューム2が出ているけど、僕は1の方が好き。
ファッシャルリリーステクニックよりも細かくは書かれていないけど、リリーステクニックがわかりやすくまとめられている。適応・目的・方法・注意など。
その分とてもわかりやすい。
アナトミートレインなら当然おさえたいのがこれ。これは第三弾なんだけど、第一弾は翻訳がひどいので購入する場合は気を付けてほしい。