意外と区別が付きにくいのか、柔道整復師と理学療法士(PT)の違いについてや「どっちがいいですか?」といった質問をそこそこ頂く。
柔道整復師と理学療法士は全然違うわけど、確かにわかりにくい部分も多いと思う。専門的な解説なんてされてもわからないしね。
そこで今回は柔道整復師と理学療法士の違いについて仕事内容だけでなく、給料面や将来性・方向性についても業界がわからない人にもわかるように説明していこうと思う。
もしどちらかで悩んでいるのなら参考になるかもしれないね。
はじめに
今回は徹底比較ということでそれぞれの資格から業務内容について書いていくんだけど、それ以外にも突っ込んでいく。
それぞれ見出しで違いについて説明しているけど、手っ取り早く知りたい場合は目次から「柔道整復師と理学療法士の比較一覧」をチェックしてほしい。
あ、あと最初に断っておくけど、管理人は自分の資格じゃないからと言って理学療法士について悪く言うつもりや柔道整復師をヒイキすることはないので、あしからず。
柔道整復師と理学療法士の違い1 仕事内容
柔道整復師と理学療法士は仕事内容はもちろん、患者への対応も違ってくる。
柔道整復師の本来の仕事は外傷(いわゆる捻挫などのケガ)を治すもの。包帯やテーピング、ギプスで固定をしたり、固定のあと固くなった組織を元に戻したりなど。つまりは患部に直接アプローチするのが柔道整復師の本来の仕事内容と言える。
今では健康保険を使わずに慢性疾患に対応したり、機能訓練指導員として介護施設で利用者の身体を訓練する。またクラブチームやプロチームのトレーナー業をしたりもする。
近年では体全体をみる重要性を認識する人の増加により患部だけでなく、体全体をみるようになってきた。
理学療法士の仕事は病院やクリニックで内科的な問題・外科的な問題に関わらわずに医師の指示のもの患者にリハビリをする。この時患部の機能はもちろん、体の使い方なども指導したりトレーニングを行う。
また柔道整復師同様、介護施設での機能訓練やスポーツ関係など体に関わる幅広い仕事を行う。
二つの仕事の大きな違いは柔道整復師は外傷の処置ができ、理学療法士は脳関係にも強いしリハビリに特化している。という感じかな。
柔道整復師にしても理学療法士にしても大きく分けると以上のようになるけど、細かく分類すると様々な系統に分かれる。
これは自分が何をしたいのか?や勤務する職場によって全く違ってくると言っていい。
柔道整復師と理学療法士の違い2 給料
給料に関しては大きな差はないものの、やや理学療法士の方が優遇されているかも?って感じかな。現状福利厚生でね。
ー給料の目安ー
資格 | 給料 | 福利厚生 | ボーナス |
柔道整復師 | 280~400万円 | × | 基本× |
理学療法士 | 300~450万円 | 〇 | 基本〇 |
ただし将来的には多少差が出る。
柔道整復師の多くは開業や院長になる傾向があるので、そこまでいくとそこそこ給料が上がる。または職場を変えることで給料を上げる。ただ勤務している場合は平均すると上の数字ぐらいになるんじゃないかなぁ。と思っている。
開業したらケースバイケース。やり方によって全然違ってくる。時給800円以下になる事もあるし、時給5000円を超えること可能だろう。
理学療法士が給料を上げる方法は、管理する立場になるか、長く勤めるか、職場を変えるの3つ。
理学療法士はまだまだ上が若いから、管理者になって給料を上げるのは難しいかもね。最近では開業する人も増えたし。
そういった点ではこれからは理学療法士は開業勢が増えるだろうし、そうしないときついだろう。
あと給料は土地によって違ってくるのも意識する必要がある。
柔道整復師と理学療法士の違い2 福利厚生
福利厚生は圧倒的に理学療法士の方がいい。
というのも柔道整復師は個人の整骨院に勤める機会が多く、個人の整骨院は社会保険などの加入がない。デイサービスなどの介護施設ならしっかりしているけど。
逆に理学療法士はクリニック、病院、介護施設などに勤務することが多く、それらの施設は原則、社会保険などのに加入している。
また整骨院は有給休暇は取りにくい。中には全く取っていない人もいるはず。
理学療法士の職場は柔道整復師よりも取りやすいね。
柔道整復師と理学療法士の違い3 開業について
開業については柔道整復師の方がいいだろう。
整骨院にしても整体院でやるにしても、デイサービスをやるにしてもそうだね。選択肢が圧倒的に広い。開業にいたっては理学療法士に出来て柔道整復師に出来ないことはないと言える。
ただ最近は理学療法士も理学療法士の資格を使わずに、いわゆる資格なしとして整体院をオープンすることも多くなった。
ただまだまだ業界的に圧倒的にも少数派なのは間違いない。
柔道整復師と理学療法士の違い4 資格取得難易度
柔道整復師と理学療法士の資格取得難易度だけど、いくつかの項目がある。まず合格率を見ていこう。
ー合格率の目安ー
直近5年の幅 | 直近5年の平均 | |
柔道整復師 | 64~75% | 67.4% |
理学療法士 | 74~90% | 83.86% |
単純に合格率は理学療法士の方が遥かに高くなっている。しかも柔道整復師は初年度の合格率であって、2回目以降(柔道整復師は一年に一度の国家試験に落ちるとまた来年受ける)は約20%と結構絶望的。
なので国家試験の合格率だけを見ると理学療法士の方が遥かに取りやすいと言える。
ただ理学療法士は臨床実習と言って卒業前に現場に出て実際にリハビリを行ったりする機会がある。実際に現場に出てその現場で評価をしてもらうわね。数ヶ月の実習を数回行うようだけど、これに落ちると再実習。再実習で落ちると留年となる。
基本的には勉強して普通の対応をしておけば問題ないとのことだけど、毎日レポートやらがあってかなり大変らしい。しかも人によっては遠方まで・・・
柔道整復師ではそういったことはなく、学校内で全て完結して資格は取れる。一応卒業テスト(実技や筆記)はあるけど、基本的に変な学校を選んだり、勉強を怠けたりしていなければ問題ない。
つまり国家試験を受ける資格である「卒業見込み」にいくまでは理学療法士の方が大変となっている。
どちらにせよ勉強は必要になるので「国家試験が楽だから」という理由で資格を選ぶのはおすすめしないよ。
柔道整復師と理学療法士の違い5 汎用性
資格の汎用性(使い勝手)という面ではそこまで差はない。
違いを書くなら開業するなら柔道整復師の方が有利で、病院勤務なら理学療法士の方が有利。
あとは柔道整復師はケガであれば健康保険が使える。これが最大の違いかな。他は下の「必要なスキル」にも書いているけど、自分が何をやりたいかによっていくらでも選択肢はある。その点この2つの資格は凡庸性は比較的いいだろうと考えている。
ただ上でも書いたけど最近では理学療法士も開業思考になっている人も少なくない。まあ理学療法士として開業は法律で出来ないから「理学療法士だけど整体師」として開業することになる。
柔道整復師の多くは開業思考だけど、僕は開業する予定はなく勤務でも全然いいと思っている。それに柔道整復師も「整骨院」でなく「整体院」として開業する人も多くなっている。現状ね。
柔道整復師と理学療法士の違い6 将来性
将来性については正直どちらとも言えない。
なぜなら「業界にはしがみついて業界の行く末=自分の行く末」としている人には将来は明るくないし、逆に自分でどうにかする精神ならどちらの資格でも明るい。資格を取り業界人になったとしても自分で意思を持ち行動する必要性はあるんだよね。
あえて厳しいことを書くなら…
柔道整復師→業界の衰退&飽和状態
理学療法士→超飽和状態
といった感じかな。
特に理学療法士の資格保持者の勢いはすさまじくて、柔道整復師が年間4000~5000人増えるのに対して、理学療法士は年間10000人増える。
まだまだ後期高齢者が増えて介護施設の増加により、理学療法士の仕事は増えるだろうけど将来的に人口が減り出す問題がある。すると介護を必要とする人も徐々に減る為、第一次ベビーブームの人が70歳になる2020年の数年後、施設の数はピークとなりあとは減っていくことが予想できる。
つまり現状病院にも理学療法士は溢れつつあり、今後は介護施設でも飽和が予想される。
柔道整復師については保険の取り扱い適正化により、なくなりはしないにしてもシビアになることが現実的。そして自費メインの整骨院や整体院がこれからも増えるだろうけど、そこに理学療法士も参入するため結局は大変になる。機能訓練指導員として介護施設で働くにしても同じことが言える。
このように柔道整復師にしても理学療法士にしても現状のままだとどちらも大変であることは間違いない。
柔道整復師と理学療法士の違い7 やりがい
やりがいに関しても自分が何をしたいか?なので資格の壁はあまりないだろう。
それぞれの職場で悩みがあったり辛いこともあるけど、自分が何をしたいかを明確にした働けばどちらの仕事でもやりがいを感じることは出来るし、その逆につまらなく感じることもある。
ただ病院でリハビリを行いたいなら理学療法士の方がいいね。
柔道整復師と理学療法士の違い8 仕事のつらさ
仕事のつらさは職場によるけど、何人かの理学療法士の友達に聞いても柔道整復師の方がややきついという印象を受ける。
それは現状、柔道整復師が個人事業寄りで理学療法士が会社員寄りだからだろう。ボーナスなし、拘束時間長い、有給休暇使えないという環境が多いのも柔道整復師だから、そういった面も関係している。
反対に惰性で長く職場にいる習慣がある職場だと理学療法士も楽ではない。
平均してきついのは柔道整復師。職場に左右されるのは理学療法士と言ったところ。
柔道整復師と理学療法士の違い9 スポーツとの関り
スポーツに関わりたくて柔道整復師や理学療法士、鍼灸師の資格を取る人は多いはすず。じゃあどっちがいいの?となるけど、どっちでも同じと答えておく。
スポーツ業界は少し特殊で保有資格よりもコネクションの方が大切。
なのでスポーツ業界に入りたいなら資格ではなく、そのスポーツと密接に関係している先生の近くにいるようにするのが手っ取り早い。
例えば野球の○○のチームは代々理学療法士が多いから理学療法士になって、そのチームに所属していた先生が働いている職場や学校に行く。って感じ。
自分でスキルを上げるだけだとほぼ声は掛けられないから、自分で意識して取りにいくようにした方がいいね。
柔道整復師と理学療法士の違い10 学校の大変さ
学校は卒後臨床研修がある分、理学療法士の方が大変だろう。
赤点のラインは資格によって違うわけではなく、学校によって違うのであまり意識する必要はない。
あとは柔道整復師は昔ながらのを大事にするので、頭髪やら態度を注意する学校もある。
ただ学校の大変さを柔道整復師と理学療法士と比べるのはあまりおすすめしない。学校を比べるならそれぞれの資格でどの学校がいいのかを吟味する方が大切。
柔道整復師と理学療法士の違い11 学費
学費は何年行くかにもよるけど平均すると下記の通り。
ー学費の目安ー
年間 | 夜間(年間) | |
柔道整復師 | 100~150万円 | -30~-50万円 |
理学療法士 | 130~200万円 | -30~-40万円 |
実習費や諸経費も込めた目安となる。
三年制なら三倍、四年生なら四倍にしてもらい、公立の場合はもっと安くなるけどほとんどは私立になる。
また四年生でも専門学校と大学で異なり、一番高いのが四年生の大学となっている。
基本的には理学療法士の方がいくらか高くなっているよう。
柔道整復師と理学療法士の違い12 必要なスキル
今の時代だと柔道整復師だから○○のスキルが必要、理学療法士だから△△が必須というのはあまりない。
というのも仕事の多様化により自分が何をしたいのか?を考え、それに合せて必要なスキルを取っていくような感じになる。
ちょっとゲームみたいだよね。
もちろんその業界の基本的なところはおさえる必要があるけど、そこからは自分次第となっている。
ただ仕事から対人スキルは必要となるので、普通に人と接するということは共通の必要なスキルと言えるかも。
柔道整復師と理学療法士の違い13 業界について
最後に比較というか業界についてちょっと解説しておく。もちろん理学療法に関しては行き届いていないところもあるけど、参考になれば幸いです。
セミナーなどで理学療法士、作業療法士はいいけど柔道整復師はダメ。みたいなことは少なくない。人数的な問題もあるんだろうけど、そういうのをみると理学療法士の業界は少し閉鎖的なのかな?と感じることはある。その逆はみたことはない。また研究や学会発表などの活動も精力的に行っている。
柔道整復の方が業界としては特殊で、一般的な社会人経験者は働いてみて驚くことは少なくないだろう。それはまだまだ個人事業主的な要素が強いからというのもある。いい方を変えればいたるところに昔の名残が残っていると言ったところかな。一応団体などで学会発表なども行っているけど、中々伸び悩んでいる印象を受ける。
柔道整復師と理学療法士の違い14 男女差
男女の違いについては個人的には大きいと思っている。
柔道整復師って女性が少ない。これをメリットとしてうまく活躍できる人がいる一方で、やはり体力的に環境が合わずにリタイアする人も実際にいる。
その点、理学療法士は柔道整復師よりも女性の割合は多くて、病院やクリニックも女性が多いのでその点を気にする人にはおすすめ。
柔道整復師と理学療法士の比較一覧
それぞれの違いや比較を簡易的に一覧にまとめてみた。それぞれいい点・悪い点はあるけど、参考にしてほしい。
柔道整復師 | 理学療法士 | |
大きな違い | 外傷(ケガ)の処置ができる | リハビリに強い(脳や内科疾患含) |
給料 | 勤務だと月手取り18~40万 ボ× | 勤務だと月手取り18~40万 ボ〇 |
福利厚生 | 介護施設以外は基本× | 〇 |
開業 | 開業向き | 最近増えているけど、まだまだ |
資格取得難易度 | 合格率はPTより低いけど実習なし | 合格率はいいけど実習あり |
汎用性 | 良い | 良い |
将来性 | 不安 | 不安 |
やりがい | ある | ある |
仕事の辛さ | 大変 | 柔道整復師よりは楽 |
スポーツとの関り | 差はない | 差はない |
学校について | 大変ではない | 実習が大変 |
学費 | 100~150万円/年 | 130~200万円/年 |
必要なスキル | 人と接する、会話する | 人と接する、会話する |
業界について | 昔の名残が残っている | 少し閉鎖的? |
女性 | 少々キツイ | 問題ない |
簡単にまとめると上記のようになる。
年収などの数字に関しては多少の誤差はあると思うけど、大まかには合っているはず。
繰り返しになるけど、最近では柔道整復師も理学療法士も差がなくなってきていると思っている。理学療法士は開業する人が増えているし、柔道整復師も体の構造や機能の勉強を以前より力を入れている。
なのでケガを最初から治したい!とか病院勤務がしたい!といった気持ちがないなら正直どちらでも大きな差はない。あとは福利厚生と性別をチェックして置けばいいと思うよ。残りは自分の行動でいくらでも変えられるので。
柔道整復師と理学療法士で迷ったら
印象としては柔道整復師が理学療法の勉強することはあるけど、理学療法士が柔道整復の勉強をすることは少ない。というかほぼないだろう。それはそもそも柔道整復は使用機会が限られているというのが大きな問題だと思う。
かといってそれだけでどちらの資格がいいとかという話に直結はしない。
それぞれメリットがあるし何より最初のレールが違う。
迷ったらやりたいことや気になることを3つあげてみよう。
そこから今回の内容を参考にどっちの方がやりたいことに近づけるか考えてみてほしい。と言ってもやりたいこと、つまり目標や夢と呼ばれるものは資格にとらわれるものではない。
どちらの資格を取ったとしても大切なのは自分で行動することと、そこからコネクションを得ること。
あとは少しの運があれば、大抵の問題はクリアできるだろう。
今回の記事は以上となるけど、柔道整復師とと理学療法士どちらの学校へ進もうか悩んでいる人の参考になれば幸いです。